【介護事業のための税金ガイド 】税理士が税務のポイントを完全解説
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永島税理士事務所、代表税理士/財務経営コンサル会社、代表取締役/経産省認定「経営革新等支援機関」/M&Aアドバイザー/AFP(ファイナンシャルプランナー) 財務戦略を武器にして、事業のステージに応じた永続経営のための支援を行っています。 毎月70人以上の様々な業種の経営者の支援をする中で、成功・失敗事例から学んだノウハウや、経営者として得た知見を発信しています。 <講演会> 各自治体の創業者研修、経営力養成講座、一部上場企業営業研修など講師として実績多数 <書籍> 『最強の戦略ツール・ビジネスモデルキャンバス』 新規事業の開発や事業拡大に不可欠なビジネスモデルキャンバスについて、詳細に解説しています。
介護事業特有の税金のポイントがあります。
細かく難しい税金の計算は、プロである税理士に任せて問題ありませんが、税金の基礎を抑える事で、税務調査への対策はもちろんのこと、適切な経営判断を行うこともできます。
今回は、介護事業の経営者が抑えておくべき必要最低限のポイントに絞って解説していきますので、是非最後までチェックしてください。
・介護事業の税務調査のポイントについてはこちら(準備中)
・介護事業の節税対策についてはこちら(準備中)
1.介護事業の税務7つのポイント
介護事業における税務の7のポイントは次の通りです。
項目 | チェックポイント |
---|---|
1-1.会計区分 | 事業及び施設ごとに分けて会計処理をする必要あり。 |
1-2.売上の計上タイミング | 介護サービスを提供したタイミング |
1-3.利用者負担分 | 介護報酬とは分けて会計処理を行う |
1-4.有償ボランティアの源泉徴収税額について | 判断を誤るとペナルティ有 |
1-5.消費税の課税・非課税の区分について | 特別なサービスを除いて、ほとんどの介護サービスは非課税 |
1-6.介護事業者の消費税の免税事業者・課税事業者の判定 | 介護事業者の多くは免税事業者 |
1-7.インボイス制度への対応 | 介護事業者の多くは対応の必要なし |
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1.会計区分
前提として、介護事業を実施する法人の種類によって異なる会計基準が適用されます。
介護事業を実施する主体の法人は、「株式会社」「医療法人」「社会福祉法人」等、様々であるため、それぞれに適用される会計基準に従い会計処理をする必要があります。
最も重要なポイントとしては、介護保険事業に関わる会計は、他の事業の会計と区別しなければならないということです。さらに、複数の介護事業を営んでいる場合、事業区分別に会計処理をする必要があります。
例えば、訪問介護とデイサービスを2事業所、不動産業を行っている場合、会計を4つに分けなければなりません。サービスの種類だけでなく、施設や事業拠点が複数ある場合は、各施設・事業拠点ごとに会計処理を行う必要があります。
1-2.売上の計上タイミング
介護事業の売上計上は、介護サービスを提供したタイミングで行います。
特に介護事業の場合、介護報酬が入金されるのが2ヶ月後になりますので、売掛金の計上が漏れないよう注意が必要です。
例えば3月末決算の場合、3月に提供した介護サービスの介護報酬を、翌月4月の頭に請求をかけ、5月に介護報酬の入金があるといったスケジュールになります。
同様に、2月に提供した介護サービスの介護報酬は4月に入金になります。
そのため、決算前2ヶ月分の売上は売掛金として計上をするのを忘れないようにしましょう。
(例)3月末決算の事業所の場合
3月:介護サービスの提供
4月:3月分の介護報酬の請求
5月:介護報酬の入金
1-3.利用者負担分
利用者負担分の売上についても、介護サービスを提供したタイミングで行います。
介護報酬とは分けて会計処理を行う必要があります。
利用者負担分については、口座振替等で回収するケースがほとんどですが、一部現金での回収となるケースがあります。この場合、現金出納帳への記帳が漏れないよう注意してください。
売上の計上漏れになってしまい、ペナルティを受ける可能性があります。
1-4.有償ボランティアの源泉徴収税額について
有償ボランティアに対する支給を給与とするか、報酬(外注費)とするかで源泉徴収税額が異なります。
給与とする場合、通常ボランティアは日雇いとなるため、日額9,300円未満であれば源泉所得徴収税額は0円となります。
報酬(外注費)とする場合、源泉徴収の対象とはなりません。
まず大原則として
・給与とは、雇用契約または、これに準ずる契約に基づいて受ける役務の提供の対価
・報酬(外注費)とは、請負契約または、これに準ずる契約に元とづいて受ける役務の対価
であることを理解しておいてください。
給与とするか報酬(外注費)とするかの判断は、次の4つの基準を元に、客観的かつ実態を踏まえて総合的に判断する必要があります。
①事業者の指揮監督命令を受けるかどうか
ボランティア業務にあたり、事業者の指揮監督命令を受ける場合、給与とみなされる可能性があります。
一方、事業者の指揮監督命令を受けずに自由に業務の進行や手順を決められる場合、報酬(外注費)となります。
②時間的・場所的な拘束があるかどうか
就業時間や就業場所が指定されている、厳密に管理されている場合、給与とみなされる可能性が高くなります。
③業務の遂行に必要な費用を負担しているかどうか
業務の遂行に必要な設備や旅費等を事業者が負担している場合、給与とみなされる可能性が高くなります。
④対価の計算・請求方法
事業者が、時間を単位として対価を計算し支払っている場合、給与とみなされる可能性が高くなります。
外注の場合、契約に基づき、有償ボランティア側、自らが請負金額を計算し、請求書を発行します。
給与とするか報酬(外注費)とするかは、勝手に決めてはいけません。
詳しくは、専門家にお問合せください。
1-5.消費税の課税・非課税の区分について
介護保険の保険対象のサービスは、利用者の自己負担分も含め、原則として消費税は非課税です。
また、介護保険対象外の食費・居住費・日常生活費等の横出しサービスについても、利用者の選定による特別なサービスを除いて、非課税となっています。
さらに、通常の介護保険の利用限度額以上のサービス(上乗せサービス)についても非課税です。
非課税の介護サービス | 課税の介護サービス |
---|---|
・訪問介護 ・訪問入浴介護 ・訪問看護 ・訪問リハビリテーション ・居宅療養管理指導 ・通所介護 ・通所リハビリテーション ・短期入所生活介護 ・短期入所療養介護(ショートステイ) ・有料老人ホーム ・養護老人ホーム ・ケアハウス ・特別養護老人ホーム ・介護老人保健施設 ・介護療養型医療施設 等 | ・特別な介護 ・特別な食事 ・特別な部屋 ・贅沢品 ・趣味 ・私物のクリーニング代 ・福祉用具貸与 ・特定福祉用具販売 ・住宅改修費用 ・事業区域外の事業者を利用した場合の交通費、送迎費用 ・日常生活の範囲を超えたサービス(大掃除、利用者の家族に対するものなど) |
1-6.介護事業者の消費税の免税事業者・課税事業者の判定
介護事業者の場合、多くが免税事業者となるため、消費税の申告、納税義務はありません。
これは、介護保険対象のサービスが消費税非課税の売上であるため、納税すべき消費税がないためです。
ただし、他に消費税の課税売上となる一般事業を行っていたり、介護保険の対象外のサービスの売上が大きくなった場合は、課税事業者となり、消費税の申告、納税義務が発生します。
1-6-1.会社設立から2年間は免税事業者
会社設立から2年では、原則、消費税免税事業者を選択することができ、消費税の納税を免除されます。
消費税の納税義務の判定は、2期前の課税売上高が1,000万円を超えているか否かを基準に免税事業者か、課税事業者かを判定します。
そのため、会社設立から2年間は2期前の売上が存在しないため、免税事業者となります。
ただし、以下の場合、消費税の課税事業者となります。
消費税の納税義務が発生する条件 次のいずれかの要件を満たすと、消費税を納税する必要があります。 |
1-6-2.会社設立から3年目以降は、課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者に
会社設立から3年目以降は、2年前の課税売上高が1,000万円を超えていると課税事業者となり、消費税の申告、納税の義務が発生します。
ただし、「課税売上高」が1,000万円を超えることが条件であるため、非課税売上が大半となる介護事業者の場合、課税売上が発生する他の事業を行っていたり、介護保険の対象外のサービスの売上が大きくならない限り、課税事業者となることは少ないと言えます。
ただし、インボイス制度の開始により「課税売上高」が1,000万円を超えていなくても課税事業者を選択しなければならないケースも出てきています。
次の章で詳しく解説します。
1-7.インボイス制度への対応
介護事業者の場合、多くが免税事業者であるためインボイス制度は関係ないと言えます。
ただし、利用者が個人だけでなく、対事業者の取引がある場合は、たとえ免税事業者であっても、インボイス制度への対応が必要となる可能性があります。
介護事業者でインボイス制度への対応が必要なケースは次の2つが考えられます。
・インボイス制度について詳しくはこちらの記事を参照してください。(準備中)
1-7-1.自社が免税事業者で取引先に課税事業者がいるケース
自社が免税事業者であるものの、物販などの事業を行っており、取引先に課税事業者がいる場合、インボイスの登録を検討する必要があります。
※顧客(利用者)が個人のみの場合、インボイス制度への対応は必要ありません。
取引先が、課税事業者である場合、仕入税額控除をするために、インボイスの要件を満たした領収書やレシート(適格請求書)を求められます。
インボイス要件を満たした領収書や、レシート(適格請求書)が発行できないと、取引先のの税負担が増加してしまうため、今後はインボイス登録をしている他社の利用を検討したり、値引きの交渉が行われる可能性があり、売上の減少に繋がりかねません。
ただし、インボイス登録するためには、課税事業者になる必要があります
課税事業者になるということは、これまで免除されていた消費税の納税義務が発生し、自社自身の税負担が大きくなります。インボイス登録をすべきかの判断は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
1-7-2.自社が課税事業者で取引先に課税事業者がいるケース
自社が課税事業者であり、物販などの事業を行っており、取引先に課税事業者がいる場合、インボイス制度の対象となるため、登録が必要となります。
インボイス登録事業者となり、インボイス要件を満たした領収書や、レシート(適格請求書)を発行する必要があります。
一方で、自社が課税事業者であっても、顧客(利用者)が個人の場合のみの場合はインボイス制度への対応は必要ありません。
まとめ
今回は、介護事業の経営者が必要最低限、理解しておいて欲しい税務のポイントを解説をしました。
介護事業における税務のポイントは、消費税の取扱いです。
介護サービスのほとんどは、消費税が非課税であることです。
ただし、一部消費税の課税対象となるサービスもありますので混合しないよう注意してください。
細かく難しい税金の計算は、プロである税理士に任せて問題ありませんが、税務の基礎を抑える事で、より適切な経営判断を行うこともできます。
今回解説した7つのポイントは覚えておくようにしましょう。