【不動産仲介業のための税金ガイド】税理士が税務のポイントを完全解説
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永島税理士事務所、代表税理士/財務経営コンサル会社、代表取締役/経産省認定「経営革新等支援機関」/M&Aアドバイザー/AFP(ファイナンシャルプランナー) 財務戦略を武器にして、事業のステージに応じた永続経営のための支援を行っています。 毎月70人以上の様々な業種の経営者の支援をする中で、成功・失敗事例から学んだノウハウや、経営者として得た知見を発信しています。 <講演会> 各自治体の創業者研修、経営力養成講座、一部上場企業営業研修など講師として実績多数 <書籍> 『最強の戦略ツール・ビジネスモデルキャンバス』 新規事業の開発や事業拡大に不可欠なビジネスモデルキャンバスについて、詳細に解説しています。
不動産仲介業では、特有の税務のポイントがあります。
細かく難しい税金の計算は、プロである税理士に任せて問題ありませんが、税務の基礎を抑える事で、税務調査への対策はもちろんのこと、適切な経営判断を行うこともできます。
今回は、経営者が抑えておくべき必要最低限のポイントに絞って解説していきますので、是非最後までチェックしてください。
・不動産仲介業の税務調査のポイントについてはこちら(準備中)
・不動産仲介業の節税対策についてはこちら(準備中)
1.不動産仲介業の税務の5つのポイント
不動産仲介業における税務の5つのポイントは次の通りです。
項目 | ポイント |
1-1.売上の計上タイミング | 原則、売買契約日とする |
1-2.土地の仲介手数料の取扱い | 消費税の課税対象 |
1-3.消費税の取扱い (課税売上高1,000万円以下、又は設立2期目までの場合) | 消費税の納税は免除 |
1-4.消費税の取り扱い (課税売上高1,000万円超の場合) | 消費税の納税義務が発生 |
1-5.インボイス制度の影響 | 事業内容や取引先の属性により異なる |
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1.売上の計上タイミング
不動産仲介業の仲介手数料は原則、「売買契約日」に売上として計上しなければなりません。
たとえ、物件の引き渡しが終わっていなくても、契約が成立した日が売上の計上タイミングとなります。
なぜなら、不動産仲介業の仕事は、売買の仲介することですので、売買契約が完了した時点で、仕事が終わったと考えるからです。
しかし、実際の取引では、売買契約日と物件の引き渡し日に分割して仲介手数料を受け取ることが多いことから、今後も同じ方法で売上計上をすることを条件に、引渡日に全額を受け取る場合は引渡日に売上を計上することが認められます。
ただし、引き渡し日より前(売買契約日など)に、一部でも入金がある場合、その日(売買契約日など)に売上を計上しなければなりません。
【事例1.売買契約日と引き渡し日の2回に分けて受領したケース】 売買契約日:3月10日 契約金:500万円
|
【事例2.引き渡し日に全額受領したケース】 売買契約日:3月10日 契約金:500万円 |
1-2.土地の仲介手数料の消費税の取扱い
土地の売買代金や賃貸料は消費税が非課税ですが、土地の売買に関わる「仲介手数料」は消費税の課税対象です。
仲介手数料は、土地売買などを仲介するサービスに対する対価であるため、消費税の対象となります。
1-3.消費税の取扱い
(2期前の課税売上高が1,000万円以下、又は設立2期目までの場合)
2期前の年間の課税売上高が1,000万円以下、または設立から2期目までの場合、原則、消費税免税事業者を選択することができ、消費税の納税を免除されます。
ただし、一定の要件を満たした場合は免除されません。
消費税の納税義務が発生する条件 次のいずれかの要件を満たすと、消費税を納税する必要があります。 ・資本金が1,000万円以上 |
ただし、インボイス制度の開始により、免税事業者を選択できない、選択しないケースも増えています。
▶インボイス制度について、詳しくはこちらの記事を参照してください。(準備中)
1-4.消費税の取り扱い
(2期前の課税売上高が1,000万円超の場合)
2期前の年間の課税売上高が、1,000万円を超える場合、消費課税事業者となり、消費税を納税しなければなりません。
消費税課税事業者となると、次に「原則課税」か「簡易課税」のどちらかを選択する必要があります。
2期前の年間の課税売上高が5,000万円を超えている場合は、強制的に「原則課税」となります。
一方、2期前の年間の課税売上高が5,000万円を超えていない場合は、「原則課税」と「簡易課税」のどちらか有利な方を、所定の期日までに税務署に届出することで選択出来ます。
原則課税とは:売上にかかる消費税額と、実際に仕入や経費等で支払った消費税額の差額をきっちり計算して消費税を納める方法です。 簡易課税とは:売上にかかる消費税に対して、一定の「割合(みなし仕入率)」をかけた金額を、消費税を支払ったとみなして計算し、納税する方法です。 不動産仲介業の場合、みなし仕入率は、40%です。 |
簡易課税と原則課税、どちらを選択すべきかは、ケースバイケースです。
特に、不動産業の場合、不動産売買や不動産賃貸、不動産管理業等、複数の事業を営んでいることが多いため、必ず専門家に相談し、シュミレーションを行った上で、有利となる方を選択するようにしましょう。
1-5.インボイス制度の影響
インボイス制度は不動産業界にとって大きな影響を及ぼしています。
不動産業の場合、不動産仲介業の他、不動産売買や不動産賃貸、不動産管理業など、複数の事業を同時に営んでいることが多いこと、さらには取引先や顧客が事業主であるのか、一般個人であるのかによって、インボイス制度によって受ける影響や、今後の対応方法が異なってきます。
安易な判断はせず、専門家に相談するようにしましょう。
上記を前提に、今回は不動産仲介業のみを営んでいる場合に限り、インボイス制度による影響を解説していきます。
インボイス制度については、自社が免税事業者であるか、課税事業者であるかによって受ける影響や対応すべきことが異なります。
2つのパターンで詳しく解説していきます。
課税売上高が1,000万円以下の免税事業者が受ける影響
基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、免税事業者である場合は、消費税の納税をしないため、インボイス制度の開始によって、自社の納める消費税の納税額が変わるといった直接的な影響は、基本的にはありません。
ただし、インボイス制度の開始に伴い、取引先からインボイスの登録を要請される可能性が高いです。
これは、取引先が「仕入税額控除」をするために、インボイスの要件を満たした領収書やレシート(適格請求書)が必要になるためです。
インボイス要件を満たした領収書や、レシート(適格請求書)が発行できないと、取引先の税負担が増加してしまうため、今後はインボイス登録をしている他社の利用を検討したり、値引きの交渉が行われる可能性があり、売上の減少に繋がりかねません。
インボイスの登録を行うためには、課税事業者にならなくてはいけません。
課税事業者になるということは、これまで免除されていた消費税の納税義務が発生し、自社自身の税負担も増えることとなります。
インボイス登録をすべきかの判断は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
※インボイス発行事業者の2割特例(期間限定の緩和措置) |
基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税事業者が受ける影響
基準期間の課税売上高が1,000万円超で、課税事業者である場合は、消費税の納税義務があるため、インボイス制度の開始によって、自社の納める消費税の納税額が変わってしまうなど直接的な影響を受ける可能性があります。
課税事業者は、インボイス制度の開始に伴い、
(1)インボイス発行側としての対応
(2)インボイスの受取側としての対応
が必要になります。
(1)インボイス発行側としての対応
前提として、課税事業者は、特別な理由がない限りインボイスの登録しておくべきです。
これは、売上先顧客から、インボイス要件を満たした領収書や、レシート(適格請求書)の発行を求められることがあるためです。
(2)インボイス受取側としての対応
インボイス受取側としての対応は、自社が簡易課税を選択しているのか、原則課税を選択しているのかにより異なります。
【簡易課税を選択している場合】
簡易課税を選択している場合、インボイス受取側として、特別に対応は必要ありません。
従来通り、みなし仕入率を利用して、納税すべき消費税の計算を行い消費税の納税を行います。
ただし、将来的に原則課税を選択する可能性もあるため、物件の紹介料や経費の支払い先がインボイスの登録を実施してるかは注視しておく必要があります。
【原則課税を選択している場合】
原則課税を選択している場合、物件の紹介料や経費の支払い先から、インボイスの要件を満たした請求書(適格請求書)を発行してもらう必要があります。
インボイスの要件を満たしていない請求書を受領した場合、その分については仕入税額控除を行うことができず、自社の支払う消費税の納税額の負担が増えてしまいます。
もし、相手先がインボイス登録をしていない場合、仕入税額控除を行うために、インボイス登録をしてもらうようにお願いをするか、今後も取引を継続するか検討する必要があります。
※注意※ 不動産業界の場合、インボイス制度へ対応はより慎重になる必要があります。 同時に、不動産売買や不動産賃貸、不動産管理業など、複数の事業を同時に営んでいる場合や、取引先や顧客の属性により、インボイス制度によって受ける影響や、今後の対応方法が異なってきます。個別判断となりますので、必ず専門家へ相談をするようにしてください。 |
2.まとめ
今回は、不動産仲介業の経営者が必要最低限、理解しておいて欲しい税金について解説をしました。
これらの知識を活用して、正確な税務処理を行うことが不動産仲介業者には求められます。
1.売上の計上タイミング
不動産仲介業の売上は基本的に売買契約日に計上することが求められます。
例外として、引渡日に全額受領する場合など、特定の条件下で引渡日に売上計上が認められるケースもあります。
2.土地の仲介手数料の消費税の取扱い
土地そのものの取引は非課税ですが、仲介手数料は課税対象です。
仲介業務はサービス提供に該当し、消費税が適用されるためです。
3.消費税の取扱い(2期前の課税売上高が1,000万円以下の場合)
課税売上高が1,000万円以下の事業者や新設法人は、消費税の納税が免除される場合がありますが、インボイス制度の影響で免税事業者の選択が難しくなる可能性があります。
4.消費税の取扱い(2期前の課税売上高が1,000万円超の場合)
課税売上高が1,000万円を超える場合、消費税を納税する義務が生じます。
原則課税か簡易課税を選択し、有利な方法を検討することが重要です。
5.インボイス制度の影響
インボイス制度の導入は、不動産仲介業者にとって大きな影響をもたらします。
どのような影響を受けるかは事業内容や、顧客の属性により異なります。
必ず、専門家に相談するようにしましょう。
これらの税務上のポイントを理解し、正確な対応を行うことで、不動産仲介業の事業運営を円滑に進めることができます。専門的なアドバイスが必要な場合は、税務の専門家に相談することをお勧めします。