
出張旅費規程で節税!実務で使える完全対応ガイド

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永島税理士事務所、代表税理士/財務経営コンサル会社、代表取締役/経産省認定「経営革新等支援機関」/M&Aアドバイザー/AFP(ファイナンシャルプランナー) 財務戦略を武器にして、事業のステージに応じた永続経営のための支援を行っています。 毎月70人以上の様々な業種の経営者の支援をする中で、成功・失敗事例から学んだノウハウや、経営者として得た知見を発信しています。 <講演会> 各自治体の創業者研修、経営力養成講座、一部上場企業営業研修など講師として実績多数 <書籍> 『最強の戦略ツール・ビジネスモデルキャンバス』 新規事業の開発や事業拡大に不可欠なビジネスモデルキャンバスについて、詳細に解説しています。
出張旅費規程で節税できることをご存じですか?
特に、利益が出ていて、出張の多い会社であれば、導入していないだけで大きく損しているかもしれません。
実は、旅費規程を整えるだけで、
・社長や従業員が所得税・住民税・社会保険料を軽減できる
・会社としても節税効果がある
・税務調査でのリスク回避にもなる
という、3つの節税効果が得られます。
にもかかわらず、制度を導入していない中小企業はまだまだ多いのが現実です。
でも、ご安心ください。
このガイドでは、旅費規程の導入による節税の仕組みと、実務での具体的な整備・運用方法を、税理士の実務視点から完全解説していきます。
難しい制度だと思われがちですが、実はテンプレートを使えば小規模企業でも即日導入可能です。
節税メリットを最大限活かし、会社経営をより有利に進めるための第一歩を、このページから始めましょう。
1.出張旅費規程による節税とは?
1-1. 仕組みの解説
出張旅費規程とは、会社が従業員や役員の出張にかかる交通費・宿泊費・日当などの取り扱いを定めた社内ルールです。
この規程をきちんと整備し、ルールに沿って運用することで、企業側・従業員側の双方に大きな節税メリットが生まれます。
特にポイントとなるのが「日当(出張手当)」の扱いです。
旅費規程に基づいて支給された日当は、税法上「給与」ではなく、所得税がかからない手当として取り扱われます。
このため、同額を給与として上乗せするよりも、
• 社長や従業員の所得税・住民税が増えない
• 社会保険料も増えない
• 会社としても社会保険料負担が増えず、法人税・消費税の節税効果も得られる
という大きな違いが生まれます。
また、宿泊費や交通費を「定額支給」にしておくことで、実費精算の手間を省きつつ、経理処理もシンプルになります。
1-2. 【事例】千葉→大阪 1泊2日×月2回の比較
ここで具体的に、どの程度の節税効果があるのかをわかりやすく見るため、モデルケースを示します。
【前提条件】
• 会社所在地:千葉県千葉市
• 出張先:大阪市(1泊2日)
• 出張頻度:月2回(年間24回)
• 新幹線往復交通費:30,000円(実費)
• 宿泊費:11,000円(実費精算 or 定額)
• 日当:3,000円/日(規程により支給)
• 役員報酬:月50万円
項目 | 規程なし | 規程あり |
交通費 | 30,000円 | 30,000円 |
宿泊費 | 11,000円 | 11,000円 |
日当 | なし | 6,000円(3,000円×2日) |
合計 | 41,000円 | 47,000円 |
【年間の節税効果】
• 社長の手取りアップ:144,000円(6,000円×24回)
• 社会保険料の追加負担なし:40,000円相当
• 合計:約184,000円の節税効果
1-3. 導入するだけでここまで変わる
旅費規程を導入する一番の魅力は「給与を増やさなくても、合法的に手取りを増やせる」点です。
例えば役員報酬を増額すると所得税・住民税・社会保険料が全て増えますが、日当は非課税扱いなのでその心配がありません。
さらに、
• 日当分の社会保険料が発生しないので、将来的な負担増を抑えられる
• 制度として社内規程に明文化されていれば、税務調査時にも「規程に基づく支給」として正当性を主張できる
• 証憑管理もルール化でき、余計な指摘を避けられる
といった複合効果が期待できます。
2.誰がどんな節税メリットを得るか?
旅費規程の節税メリットは、「会社側のコスト最適化」だけではなく、実際に出張に行く社長や従業員、さらに経理部門にとっても大きな恩恵があります。
2-1. 社長個人のメリット
会社の代表である社長自身が多く出張する場合、旅費規程に基づき非課税の日当を受け取ることで、
• 役員報酬として上乗せするのと違い、所得税・住民税が増えない
• 社会保険料の算定にも含まれないため負担が増えない
• 実質的な手取りアップにつながる
という大きな違いが生まれます。
特に、報酬を一定水準に抑えている社長にとっては、日当支給を活用するだけで数十万円以上の手取りアップが可能です。
2-2. 従業員個人のメリット
従業員が出張に行く場合も同様です。
• 出張時の細かな雑費をカバーできる
• 給与として課税されないので所得税・住民税が増えない
• 社会保険料の対象外なので負担も増えない
• 結果として福利厚生の満足度が上がり、出張に対するモチベーションが上がる
という効果があります。
2-3. 会社としてのメリット
会社側にとっても、旅費規程を整備することで大きな経済的メリットがあります。
• 出張にかかる旅費(日当・宿泊費・交通費)は全額損金(経費)扱い
• 消費税の仕入税額控除ができる
• 日当を非課税で支給することで、給与支給に比べて社会保険料負担が抑えられる
• 規程があることで、税務調査の際も正当性を説明しやすくなる
• 経費処理の一元化で経理業務が効率化される
こうした複合的なメリットは、特に中小企業にとっては見逃せないポイントです。
3.出張旅費規程導入により非課税で日当を支給する3つの条件
旅費規程を導入しても、単に規程があるだけでは日当が非課税になるとは限りません。
税務調査でもっともチェックされるのが「この3条件をきちんと満たしているか」です。
3-1. 出張が“業務目的”であること
非課税の前提条件は、出張が明確に業務目的であることです。
例えば、以下のような場合は認められます。
• 取引先への訪問、打合せ、商談
• 支店や現場の視察・監査
• 展示会や研修、セミナーへの参加
逆に、観光や私用を兼ねているように見える出張は、日当が否認される原因になります。
【ポイント】
業務目的を証明するために、
• 出張命令書(誰がどこへ行くか)
• 出張報告書(訪問先、目的、成果)
• 日程調整メールや議事録
を必ず残しておきましょう。
3-2. 社内の旅費規程に基づいていること
2つ目は、「規程に沿った支給かどうか」です。
• 出張の定義(距離、時間の目安)
• 役職や地域別の手当額
• 実費精算の対象範囲
• 承認フローや証憑の保存方法
これらが社内規程として明文化されていて、かつ実際の運用が一致していることが重要です。
【注意】
規程を作っても「運用されていない」「額が異常に高い」と判断されると、日当が給与扱いになり課税されます。
3-3. 日当金額は常識的範囲内であること
最後の条件は、「社会通念上妥当な金額」です。
税法に明確な上限はありませんが、相場を超えると課税対象になります。
【目安】
• 財務省「官公庁職員の出張旅費等実態調査」より
日当(国内):平均2,621円
宿泊費(国内):平均10,672円
引用:財務省調査
役職・地域・物価を踏まえ、常識的範囲で設定するのがポイントです。
4.出張旅費規程導入の実務フロー完全解説
制度として作るだけではなく、「実務でどう運用するか」が成功の鍵です。
4-1. 出張旅費規程作成の流れ
旅費規程導入は大きく分けて以下の流れで進めます。
1.現状把握
出張頻度・対象者・既存の精算方法を整理する。
2.制度設計
出張の定義(例:勤務地から50km以上)、役職・地域別の日当・宿泊費額、実費精算範囲を決める。
3.文書化
就業規則の付属文書として、誰が読んでも分かる形にする。
4.社内周知
社員説明会や資料配布でルールを徹底する。
5.テンプレ整備
出張命令書・申請書・報告書・精算書を作り、フォーマットを統一。
6.証憑管理ルール構築
領収書や報告書の保管方法を決め、紛失防止と税務調査対策に備える。
4-2.会社が作成すべきもの
• 出張旅費規程(就業規則の一部として)
• 支給基準表(日当・宿泊費を役職・地域別に)
• 出張命令書・申請書・報告書・精算書(全てテンプレでOK)
4-3.導入時の注意点
• 就業規則に組み込むなら、労働基準監督署への届け出が必要。
• 社労士や税理士と連携し、法令順守と実務のバランスを取る。
• 従業員へ制度を説明し、理解してもらうこと。
4-4.実務運用時の流れと担当者の役割
出張が発生した際、どのように進めるかを整理しておきましょう。
タイミング | 経理担当者 | 出張者 |
出張前 | 出張申請書を確認・承認 | 主張申請書を提出 |
出張中 | - | 領収書を保管、活動記録をメモ |
出張後 | 清算書の確認・支給処理 | 報告書と清算書を提出 |
4-5.決算・税務対応と証憑管理
年度末や税務調査を見据え、証憑を適切に保管しておくことが重要です。
• 必要な証憑:命令書・申請書・報告書・領収書・スケジュール
• 保管方法:PDF化してクラウド保存、紙は年度別ファイリング
【決算時のポイント】
・日当・宿泊費は支給月で損金処理
・領収書がない支出は報告書で補完
・年に1回は規程と運用の一致を見直す
5.出張精算のポイントと運用実例
どれだけ良い旅費規程を整えても、精算の実務がずさんだと非課税扱いが否認されることがあります。
ここでは、精算の流れと運用でよくある注意点を整理します。
5-1. 精算手順・証憑の扱い
1.出張報告書の提出
誰が・どこへ・何のために行ったかを明記します。
2.旅費精算書の提出
日当・交通費・宿泊費などの明細を記載し、経理に提出。
3.領収書の添付
実費分(宿泊・交通費など)は原則領収書が必要です。
4.経理担当者による確認・支給処理
報告書・精算書の内容に不備がないかをチェック。
【ポイント】
領収書が取得できない場合でも、報告書に理由や詳細を記録しておくと、税務調査でのリスクを減らせます。
5-2.注意事項
以下のものは業務経費として認められません。
• 家族同伴の費用
• QUOカード付き宿泊プラン
• ホテルのルームサービスや朝食・夕食分の上乗せ差額
• グリーン車・ビジネスクラスへのアップグレード(課長以下など規程外の場合)
• お土産や私的買い物
【コツ】
領収書はインボイス対応しているかも確認し、可能であればPDF化しクラウド保管を推奨します。
6.税務調査で否認されない証憑準備
旅費規程を導入していても、「証憑(しょうひょう)」が揃っていなければ税務調査で否認される可能性があります。
以下の資料はセットで保管しましょう。
種類 | 内容 |
出張命令書・申請書 | 上長承認月の業務命令証明 |
出張報告書 | 訪問先・目的・成果の記録 |
会議議事録 | 出張先での打合せ内容の証明 |
メール | 日程調整や連絡履歴 |
交通費・宿泊領収書 | 新幹線・ホテルの領収書 |
清算書 | 経理で処理された支払記録 |
スケジュール表 | Googleカレンダーや紙記録 |
必ず複数の証憑を組み合わせておくことが信頼性を高めます。
7.FAQ
Q1. 規程がなくても経費処理できる?
宿泊費や交通費は可能ですが、日当の非課税支給は旅費規程が必須です。
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Q2. 日当を高額にしてもいい?
社会通念上妥当な範囲を超えると給与扱いになります。官公庁の相場を参考にしましょう。
________________________________________
Q3. 領収書がないとどうなる?
日当は不要ですが、実費分は必要です。不足分は報告書で補完を。
________________________________________
Q4. 観光地出張は疑われる?
業務目的を示せればOK。出張命令書・報告書を必ず残しましょう。
________________________________________
Q5. 家族分の費用も計上できる?
できません。業務と無関係な費用は除外です。
8.まとめ
旅費規程を整えることで、
• 社長・従業員の手取りが増える(非課税)
• 会社の法人税・社会保険料・消費税が最適化される
• 税務調査で否認されない制度を構築できる
という3拍子揃ったメリットがあります。
テンプレートを活用すれば、即日で導入可能です。
制度を作り、運用し、証憑を残す。これが安心経営の第一歩です。
✅ チェックリスト
チェック項目 | 内容 | 確認状況 | |
規程が文書化されている | 出張定義・手当基準を明記 |
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非課税要件を満たしている | 業務目的・妥当額・規程通り支給 |
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精算書が整備されている | 必要事項が揃っている |
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証憑の保管ルールがある | 紙・PDF管理が明確 |
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社内で周知されている | 説明会・マニュアル配布済み |
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