【ホームページ制作業のための税金ガイド】税理士が税務のポイントを完全解説
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永島税理士事務所、代表税理士/財務経営コンサル会社、代表取締役/経産省認定「経営革新等支援機関」/M&Aアドバイザー/AFP(ファイナンシャルプランナー) 財務戦略を武器にして、事業のステージに応じた永続経営のための支援を行っています。 毎月70人以上の様々な業種の経営者の支援をする中で、成功・失敗事例から学んだノウハウや、経営者として得た知見を発信しています。 <講演会> 各自治体の創業者研修、経営力養成講座、一部上場企業営業研修など講師として実績多数 <書籍> 『最強の戦略ツール・ビジネスモデルキャンバス』 新規事業の開発や事業拡大に不可欠なビジネスモデルキャンバスについて、詳細に解説しています。
「ホームページ制作業」特有の税金のポイントがあります。
細かく難しい税金の計算は、プロである税理士に任せて問題ありませんが、税金の基礎を抑える事で、税務調査への対策はもちろんのこと、適切な経営判断を行うこともできます。
今回は、ホームページ制作業の経営者が抑えておくべき必要最低限のポイントに絞って解説していきますので、是非最後までチェックしてください。
・ホームページ制作業の税務調査のポイントについてはこちら(準備中)
・ホームページ制作業の節税対策についてはこちら(準備中)
1.ホームページ制作業の税務の9つのポイント
ホームページ制作業における税務の9つのポイントは次の通りです。
項目 | チェックポイント |
---|---|
1-1.売上の計上タイミング | 原則、「目的物が完成し、相手に引き渡した日」 |
1-2.経費の範囲 | プライベートとの混在に注意。 |
1-3.売上原価の処理 | 給与と外注費では処理が異なる。 |
1-4.棚卸資産 | 期末時点で未完成のホームページ制作に係る外注費は、棚卸資産 |
1-5.ホームページ制作ソフト | 原則、5年かけて経費(損金)に算入 |
1-6.自社のホームページを作成した場合の取扱い | 原則、5年かけて経費(損金)に算入 |
1-7.消費税の取扱い
(2期前の課税売上高が1,000万円以下、又は設立2期目までの場合) |
消費税の納税は免除 |
1-8.消費税の取り扱い
(2期前の課税売上高が1,000万円超の場合) |
消費税の納税義務が発生 |
1-9.インボイス制度への対応 | ほとんどのホームページ制作業はインボイス登録が求められる |
それぞれ詳しく解説していきます。
1-1.売上の計上タイミング
ホームページ制作業の売上の計上は、原則「目的物が完成し、相手に引き渡した日」、物の引き渡しがない契約については、「役務の提供を完了した日」になります。
ただし、ホームページ制作業の場合、ホームページの制作とその後の管理を一括して請け負うケースが多いため、実際のところは、契約時に着手金を受領したり、設計時に報酬の一部、完了時に報酬の満額を受領する場合があります。
このような場合、その区分された業務が完了した時点で、収益を計上することになります。
1-2.経費の範囲
ホームページ制作業はフリーランスの方も多く活躍する業界です。
ノマドワーカーとして、喫茶店やコワーキングスペースなどオフィス以外の場所で仕事をするケースも多くなってます。仕事とプライベートの境目が曖昧になるケースも多く、それに伴い経費になるもの、ならないものの区別も難しくなっています。
大原則として、事業に関係ある支払いであることを説明できるのであれば経費として認められる可能性が高いです。
例えば、仕事をする目的でカフェに入り、コーヒーを注文した場合や、取引先との打ち合わせでコーヒーを注文した場合などは、経費としても認められる可能性が高いです。
しかし、食事も一緒に取った場合は取り扱いが異なります。
一人で仕事をする目的でカフェに入り、コーヒーと食事をとった場合、食事代は経費として認められません。
コーヒー代のみが経費として認められます。
取引先との打ち合わせでコーヒーと食事を一緒に取った場合、これは「会議費」または「接待交際費」として経費として認められます。
ただし、プライベートと区別をするためにも、誰と何の目的で打合せをしたのか等をレシートに記載するようにしてください。
1-3.売上原価の処理
ホームページ制作業の原価のほとんどは人件費で占められます。
本来は、1プロジェクトに対応した売上原価を経費(損金)算入するべきですが、多くの場合、一人の技術者が、同時並行的に複数のプロジェクトに携わっていたり、完成しているホームページの管理業務を担当してるため、その技術者の人件費を個々のプロジェクトの原価に対応させることは困難です。
このような場合、今後も同様の処理を行うことを前提として、次の2つの費用について、支出の都度、経費(損金)に算入することが認められています。
①固定費(従業員へ支払う給与等)
②変動費の内、一般管理費に類するものでその額が多額でないもの及び相手方から収受する支度金、着手金に係るもの(返金不可の支度金・着手金を受け取るために要した外注費など)
自社の従業員へ支払う給与は、固定費に該当するため、給与の支払い時に経費(損金)に算入することが出来ます。一方、外注を使っている場合の外注費は、作業量に応じて金額が変動するため、固定費には該当しません。
そのため、確定した売上に対応する外注費のみが経費(損金)に算入されます。
ただし、返金不可と契約を締結している支度金・着手金にかかった外注費等は、経費(損金)に算入することが認められています。返金不可と契約をしている支度金・着手金は受けとった年度の収益として計上できるためです。
1-4.棚卸資産
ホームページ制作の場合、商品・原材料の仕入がないため、棚卸資産が発生しないように思われる方も多いですが、期末時点で未完成のホームページ制作に係る外注費は、棚卸資産となります。
1-2.売上原価の処理で解説したとおり、外注費は作業量に応じて金額が変動するため、各プロジェクトへの対応性が強いためです。
期末時点で未完成のホームページ制作に係る外注費は、経費(損金)とせず棚卸資産に振り替えるようにしてください。
1-5.ホームページ制作ソフト
ホームページを制作するにあたり、必要となるホームページ制作ソフトは、原則「無形減価償却資産(ソフトウェア)」に該当するため、5年かけて経費(損金)に算入していきます。
ただし、30万円未満のソフトの場合、少額減価償却資産の特例によって、購入した年の経費(損金)とすることができます。
1-6.自社のホームページを作成した場合の取扱い
ホームページ制作業者が、自社のホームページを制作した場合、その自社のホームページは「無形減価償却資産(ソフトウェア)」として計上され、その制作に要した費用は、5年かけて経費(損金)に算入していきます。
その制作に要した費用は原則、次の①と②の合計額になります。
①その資産の制作のために要した原材料費、労務及び経費の額
②その資産を事業に使うために直接かかった費用の額
自社の従業員の労務費の取扱いがポイントです。
平均的な時間給を計算し、実際に働いた時間をかけて労務費を算出するなどの方法があります。
1-7.消費税の取扱い
(2期前の課税売上高が1,000万円以下、又は設立2期目までの場合)
2期前の年間の課税売上高が1,000万円以下、または設立から2期目までの場合、原則、消費税免税事業者を選択することができ、消費税の納税を免除されます。
ただし、一定の要件を満たした場合は免除されません。
消費税の納税義務が発生する条件
・資本金が1,000万円以上
|
ただし、インボイス制度の開始により、免税事業者を選択できない、選択しないケースも増えています。
詳しくは、1-9.インボイス制度への対応で解説しています。
1-8.消費税の取り扱い
(2期前の課税売上高が1,000万円超の場合)
2期前の年間の課税売上高が、1,000万円を超える場合、消費課税事業者となり、消費税を納税しなければなりません。
2期前の年間の課税売上高が5,000万円を超えている場合は、強制的に「原則課税」となります。
一方、2期前の年間の課税売上高が5,000万円を超えていない場合は、「原則課税」と「簡易課税」のどちらか有利な方を、所定の期日までに税務署に届出することで選択出来ます。
原則課税とは:売上にかかる消費税額と、実際に仕入や経費等で支払った消費税額の差額をきっちり計算して消費税を納める方法です。
簡易課税とは:売上にかかる消費税に対して、一定の「割合(みなし仕入率)」をかけた金額を、消費税を支払ったとみなして計算し、納税する方法です。ホームページ制作業の場合、みなし仕入率50%を採用することができます。
ホームページ制作業の場合、「簡易課税」を選択し、みなし仕入率50%を提供した方が有利になる可能性が高いです。
これは、ホームページ制作業の経費のほとんどが、人件費であり、給与には、消費税がかからないため、引ける消費税がほとんどないためです。
ただし、外注を多く利用している場合は、その限りではありません。
簡易課税と原則課税、どちらを選択すべきかは、ケースバイケースです。
経費や今後の投資の計画なども踏まえて、しっかりとシミュレーションする必要があります。
もし、一度簡易課税を選択した場合、2年間は継続しなければなりませんので注意が必要です。
安易な判断は危険です。必ず税理士に相談するようにしましょう。
1-9.インボイス制度への対応
インボイス制度はホームページ制作業にとって大きな影響を及ぼしています。
インボイス制度については、自社が免税事業者であるか、課税事業者であるかによって受ける影響や対応すべきことが異なります。
2つのパターンで詳しく解説していきます。
インボイス制度について詳しくはこちらの記事を参照してください。(準備中)
基準期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者が受ける影響
基準期間の課税売上高が1,000万円以下または、会社設立から2期目までの会社で、現在免税事業者である場合は、消費税の納税義務がありません。
しかし、ホームページ制作業の場合、インボイス制度の開始によって、消費税の納税義務が発生する可能性が高くなります。
インボイス制度が開始すると、取引先からインボイスの登録事業者になるよう依頼される可能性があります。
インボイスの登録事業者になるためには、まず課税事業者になる必要があり、結果的に消費税の納税義務が発生します。
ホームページ制作業の場合、取引先は事業者であることがほとんどであり、その取引先が「仕入税額控除」をするためには、インボイス登録事業者が発行するインボイスの要件を満たした領収書やレシート(適格請求書)が必要になるためです。
インボイス要件を満たした領収書や、レシート(適格請求書)がないと、取引先の税負担が増加してしまうため、今後はインボイス登録をしている他社の利用を検討したり、値引きの交渉が行われる可能性があり、売上の減少に繋がる可能性があります。
インボイスに登録しなければ、売上が減少してしまう可能性があり、インボイスに登録すれば消費税の納税義務が発生すると、どちらを選択すべきか非常に悩むところかと思います。
インボイス登録をすべきかの判断は、取引先との関係も加味して検討すべきでああるため、判断に迷う場合は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
※インボイス発行事業者の2割特例(期間限定の緩和措置) インボイス制度をきっかけに、免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)となった事業者を対象に、消費税の納付税額を、売上にかかる消費税の2割とすることが出来る緩和措置が設けられています。(適用期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの課税期間) |
基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税事業者が受ける影響
基準期間の課税事業者である場合は、消費税の納税義務があるためインボイス制度への対応が必要です。
正しい対応をしないと、消費税の納税金額の負担が増える可能性があります。
課税事業者が対応すべきは重要なポイントは、インボイス受取側としての対応です。
簡易課税を選択しているケースと、原則課税を選択しているケースで対応が異なりますのでそれぞれ解説します。
①簡易課税を選択している場合
簡易課税を選択している場合、特別に対応は必要ありません。
従来通り、みなし仕入率を利用して、納税すべき消費税の計算を行い消費税の納税を行います。
ただし、将来的に原則課税を選択する可能性もあるため、外注先や取引先がインボイスの登録を実施してるかは注視しておく必要があります。
②原則課税を選択している場合
原則課税を選択している場合、外注や取引先からインボイス(適格請求書)を発行してもらう必要があります。
受け取った請求書やレシート、領収書が、インボイスの要件を満たしたものであるか、確認が必要です。
インボイス(適格請求書)を発行してもらえないと、仕入税額控除を行うことが出来ず、消費税の納税額の負担が大きくなります。
ホームページ制作業の場合、外注先がフリーランスや個人事業主の免税事業者のケースが多くなります。インボイス登録をしてもらうよう要請する、また外注先、取引先を変更するなどの対応が必要になります。
インボイス登録はするべき? 課税事業者の場合、もともと消費税の納税義務がありますので、特別な理由がない限りインボイスの登録はしておくべきです。 取引先から、インボイス要件を満たした領収書や、レシート(適格請求書)の発行を求められますので、インボイス登録を行い、インボイス要件を満たした書類の体裁を整えておきましょう。 |
2.まとめ
今回は、ホームページ制作業の経営者が必要最低限、理解しておいて欲しい税金について解説をしました。
ホームページ制作業の場合、工制作期間が長くなることや外注を利用することが多いため、売上や損金の計上タイミングに注意が必要です。
また、インボイス制度に関する対応も求められる業種です。
自社がどの立場にいるのかを理解し、適切な対応をするようにしましょう。
細かく難しい税金の計算は、プロである税理士に任せて問題ありませんが、税務の基礎を抑える事でより適切な経営判断を行うこともできますので、今回解説した9つのポイントは覚えておきましょう。