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【美容室や理容室のための税金ガイド】税理士が税務のポイントを完全解説

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【美容室や理容室のための税金ガイド】税理士が税務のポイントを完全解説
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永島俊晶

永島税理士事務所、代表税理士/財務経営コンサル会社、代表取締役/経産省認定「経営革新等支援機関」/M&Aアドバイザー/AFP(ファイナンシャルプランナー) 財務戦略を武器にして、事業のステージに応じた永続経営のための支援を行っています。 毎月70人以上の様々な業種の経営者の支援をする中で、成功・失敗事例から学んだノウハウや、経営者として得た知見を発信しています。 <講演会> 各自治体の創業者研修、経営力養成講座、一部上場企業営業研修など講師として実績多数 <書籍> 『最強の戦略ツール・ビジネスモデルキャンバス』 新規事業の開発や事業拡大に不可欠なビジネスモデルキャンバスについて、詳細に解説しています。

目次

美容室・理容室では、特有の税務のポイントがあります。
細かく難しい税金の計算は、プロである税理士に任せて問題ありませんが、税務の基礎を抑える事で、税務調査への対策はもちろんのこと、適切な経営判断を行うこともできます。

今回は、経営者が抑えておくべき必要最低限のポイントに絞って解説していきますので、是非最後までチェックしてください。

・美容室・理容室の税務調査のポイントについてはこちら(準備中)
・美容室・理容室の節税対策についてはこちら(準備中)

1.美容室・理容室の税務の6つのポイント

美容室・理容室における税務の6つのポイントは次の通りです。

項目ポイント
1-1.売上の管理売上の管理・計上方法に注意。
1-2.在庫の管理期末に棚卸作業が必要。
1-3.広告宣伝費広告宣伝費の計上時期に注意。
1-4.消費税の取り扱い
(課税売上高1,000万円以下又は設立2期目までの場合)
消費税の納税は免除される。
1-5.消費税の取り扱い
(課税売上高1,000万円超の場合)
消費税の納税義務が発生。
1-6.インボイス制度の影響顧客が一般個人の場合、インボイス登録の必要なし。

それぞれ詳しく解説していきます。

1-1.売上の管理

①現金売上

美容室や理容室の売上は、その場で現金を受け取る「現金商売」であるため、正確な売上の管理・計上が重要なポイントです。
現金商売は、売上の計上漏れの温床と言われているため、税務調査では厳しくチェックが行われます。

常日頃から、現金残高と現金出納帳の照合はもちろんのこと、加えて伝票やレジの記録、予約表との照合も徹底して行うようにしましょう。
一日の現金売上は、当日又は翌日に銀行口座へ入金するようにしましょう。
この時に、売上代金からはつり銭や経費の支払いを行わず、一日の現金売上をそのまま入金することがおすすめです。
1日の売上がわかりやすくなりますし、税務調査時に余計な疑念を持たれないようにするポイントでもあります。

特に期末直前は、銀行への入金が一日遅れたことによる計上漏れや、売上代金からつり銭や経費の支払い用の現金を引いて銀行へ入金したことによる、売上の計上漏れに注意してください。

②クレジットカード売上

クレジットカードによる売上は、レジの記録を基に売掛金として計上します。
カード決済の場合、カード会社から売上代金が入金される際に、クレジット手数料が差し引かれて入金されています。
そのため、売上を計上する際には、クレジット手数料も含めた金額を売上として計上しなければなりません。

また、クレジット手数料については、消費税の課税区分が「非課税」であるため、会計ソフトへ登録する際には注意してください。
クレジットカード売上の内、クレジット手数料は「非課税」、カード会社から入金された売上代金は「課税売上げ」となります。

③ポイントシステム

ポイント制度を導入している場合、会計処理に注意が必要です。
自社のみで利用されるポイントの場合は、ポイントを顧客に付与した時点では処理せず、顧客がポイントを利用したときに、売上値引き処理を行います。

複数の事業者間で互いに発行、利用ができるポイントの場合、ポイントを付与した時点と利用した時点のその都度、金銭で清算されます。

顧客へポイントを付与した時には、ポイントの運営会社からポイント分の請求があり、支払う必要があります。この時は、ポイントを付与した時点で、広告宣伝費で計上します。

顧客がポイントを利用した時には、ポイント運営会社にポイント利用分を請求し、入金してもらいます。この時、ポイント分は売上で計上します。

④物販商品の売上

美容室・理容室で販売される商品(シャンプーや化粧品など)の売上も正確に計上する必要があります。
物販の売上は、消費税の取扱いが異なるため、カットやパーマなどの技術の提供による売上と、分けて管理をするようにしましょう。

現物給与としての課税に注意!
物販の商品を、従業員へ無償で提供したり、原価以下の金額で販売をすると現物給与として、課税対象となり、従業員の税負担が重くなる可能性があるため注意が必要です。
次の要件を全て満たすことが出来れば、原則、現物給与として課税対象にはならないとされています。

・値引販売価格が、原価以上かつ、販売価格の概ね70%以上であること
・値引き率が、一律であること。(職位や勤務年数によって差がないこと)
・一般的に家庭で消費される量であること

1-2.在庫の管理

決算時には、カラー剤、パーマ液、シャンプー、トリートメントなどの薬品等や、物販の商品の棚卸を実施し、記録しておく必要があります。
棚卸とは、在庫の金額を確定させることです。
在庫の金額を確定することで、利益を正しく算出することが出来るようになるのです。

正しく棚卸を行なっていないと、利益を正しく算出することが出来きず、「不当に利益を下げている」と税務署が判断すれば、過少申告であるとして、追徴課税などのペナルティーを受ける可能性があります。

1-3.広告宣伝費

ホームページの制作や雑誌広告、インターネット広告、チラシ、ポイントシステムの利用、予約サイトへの紹介料などの費用は、原則、広告宣伝費として計上します。
これらは、広告が世に出たタイミングで経費(損金)計上されます。
例えば、ホームページの場合、サイトを公開した時点、インターネット広告の場合、広告の公開期間に応じて広告宣伝費となります。

ただし、ホームページについては、来店予約機能がついている場合や金額によって、広告宣伝費ではなく、資産として計上され、耐用年数5年で償却が行われます。


1-4.消費税の取り扱い
(課税売上高1,000万円以下又は、設立2期目までの場合)

2期前の年間の課税売上高が1,000万円以下、または設立から2期目までの場合、原則、消費税免税事業者を選択することができ、消費税の納税を免除されます。
設立から3期目以降であっても、2期前の年間の課税売上高が、1,000万円以下の場合は、消費税の納税は免除されます。

ただし、一定の要件を満たした場合は免除されません。

消費税の納税義務が発生する条件
次のいずれかの要件を満たすと、消費税を納税する必要があります。
・資本金が1,000万円以上
・1期目の前半6カ月の課税売上高及び、給与支払額が1,000万円を超える
・消費税課税事業者選択届を提出している
・特定新規設立法人である(課税売上高が5億円を超える法人が、株式等を50%超保有している)
・適格請求書発行事業者の届出を提出している。

1-5.消費税の取り扱い
(課税売上高1,000万円超の場合)

設立から3期目以降で、2期前の年間の課税売上高が、1,000万円を超える場合、消費課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。

消費税課税事業者となると、次に「原則課税」か「簡易課税」のどちらかを選択する必要があります。
課税売上高が5,000万円を超えている場合は、強制的に「原則課税」となります。
原則課税とは、売上にかかる消費税と実際に仕入等で支払った消費税の差額をきっちり計算して消費税を納める方法です。

一方、2期前の年間の課税売上高が5,000万円を超えていない場合は、「原則課税」と「簡易課税」のどちらか好きな方を選択することが出来ます。
簡易課税とは、売上にかかる消費税に対して、一定の「割合(みなし仕入率)」をかけた金額を、消費税を支払ったとみなして計算し、納税する方法です。

人件費の割合が高い、美容室や理容室では、みなし仕入率50%を採用することが出来る「簡易課税」を選択した方が一般的に有利になると言えます。

簡単な事例で比較してみます。


<売上1,500万円 ・仕入等630万円の場合の原則課税と簡易課税の消費税比較表>

原則課税簡易課税
87万円75万円

差額12万円

12万円、簡易課税の方が有利になります。

この計算について、詳しい内容が知りたい方は、このまま続きを読んでください。
結論だけ知りたい方は、この先を飛ばして、1-6のインボイス制度へ

【前提】
売上1,500万円
仕入等630万円
※物販なし、みなし仕入率50%

原則課税の場合

▼売上にかかる消費税
1,500万円 × 10% = 150万円①

▼実際に仕入や経費等で支払った消費税額
630万円 × 10% = 63万円②

消費税納税額
①150万円 - ②63万円 =87万円
原則課税の場合、87万円の消費税を納めることになります。

簡易課税の場合

▼売上にかかる消費税
1,500万円 × 10% = 150万円①

▼消費税納税額
①150万円 - (①150万円 ×みなし仕入率50%)=75万円
簡易課税の場合、75万円の消費税を納めることになります。

このように、美容室や理容室のように人件費の率が高い事業の場合は、簡易課税を選択した方が有利になるケースが多いです。

ただし、一度簡易課税を選択した場合、2年間は継続しなければならないことや、経費や設備投資の計画など、しっかりとシミュレーションする必要があります。
消費税の計算は複雑ですので、簡易課税、原則課税どちらの方が有利になるのかは税理士に相談するようにしましょう。

※簡易課税を選択した場合、カットやパーマなどの技術に対する売上は、みなし仕入率50%、物販に対する売上は、みなし仕入率80%となります。
複数のみなし仕入率が適用になる場合、消費税納税額の計算が異なります。

1-6.インボイス制度の影響

課税売上高が1,000万円以下の免税事業者が受ける影響

課税売上高が1,000万円以下で、免税事業者である場合は、消費税の納税をしないため、インボイス制度による直接的な影響は、基本的にはありません。

【インボイス登録はするべき?】
美容室・理容室の場合、わざわざ課税事業者を選択し、インボイス登録をする必要も、今のところはないと考えて問題ありません。
美容室・理容室の顧客は、事業者ではなく消費者でありインボイス制度の影響を受けないためです。

課税売上高が1,000万円を超える課税事業者が受ける影響

課税売上高が1,000万円超で、課税事業者である場合は、消費税の納税義務があるため、対応が必要になりますが、簡易課税を選択しているケースと、原則課税を選択しているケースで対応が異なります。

①簡易課税を選択している場合

簡易課税を選択している場合、特別に対応は必要ありません。
従来通り、みなし仕入率を利用して、納税すべき消費税の計算を行います。

②原則課税を選択している場合

原則課税を選択している場合、仕入先等からインボイス(適格請求書)を発行してもらう必要があります。インボイスを発行してもらえないと、仕入税額控除を行うことが出来ず、消費税の納税額の負担が大きくなります。つまり、仕入にかかった消費税を、売上にかかる消費税から引くことが出来ないということです。
仕入税額控除を行うためには、仕入先等にインボイス登録をしてもらうように、お願いをする必要があります。ただし、仕入先等がその要望に応えてくれるとは限りません。

業務委託契約(フリーランス)の美容師・理容師がいる場合
業務委託契約(フリーランス)の美容師・理容師が免税事業者である場合、美容室・理容室側は、仕入税額控除をすることができないため、消費税の負担が増えます。
そのため、業務委託契約(フリーランス)の美容師・理容師には、インボイス登録をお願いする必要があります。
一方で、フリーランス側からすると、インボイス登録をするには、免税事業者から課税事業者への転換が必要となり、これまで免除されていた消費税の納税義務が発生することになり、税金の負担が増えます。そのため、お互いに価格の交渉、直接雇用への変更など話し合いが必要です。
インボイス制度を理由にした不当な値下げ要求は、法律違反になる恐れがありますので注意してください。

【インボイス登録はするべき?】
顧客が、一般個人メインでインボイスの発行を求められる機会が少ないのであれば、登録をしなくても大きな影響はないと言えます。
もし、タレント業のお客様や、芸能事務所からのヘアメイクの依頼があるなど、事業者との取引がある場合は、インボイスの発行を求められることがあるため、インボイス登録をしておいた方が良いでしょう。

※インボイス発行事業者の2割特例(期間限定の緩和措置)
インボイス制度をきっかけに、免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)となった事業者を対象に、消費税の納付税額を、売上にかかる消費税の2割とすることが出来る緩和措置が設けられています。(適用期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの課税期間)

2.まとめ

今回は、美容室・理容室の経営者が必要最低限、理解しておいて欲しい税務について解説をしました。

美容室・理容室における税務では、日々の売上の正確な記録から、消費税の適切な処理まで、幅広い知識と注意が求められます。
特に現金取引の多い業界ですので、日々の正確な記録・管理が重要です。
日々の正確な記録・管理は、税務調査への対策はもちろんのこと、経営者として、経営の状況を把握し、適切な判断をするためにも役立ちます。

細かく難しい税金の計算は、プロである税理士に任せて問題ありませんが、税務の基礎を抑える事でより適切な経営判断を行うこともできますので、今回解説した6つのポイントは覚えておきましょう。

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